
開発者インタビュー
DNPが挑むスポーツDXの壁 『スポーツ情報管理サービス』が、スポーツの”みる・する・ささえる”の課題を解決する

より良い競技スポーツ体験や競技団体運営、スポーツ教育の向上など、スポーツのDX(デジタルトランスフォーメーション)化による変革が推進される昨今だが、なかなか競技団体や教育機関の運動部では導入が進んでいないのが現状だ。
スポーツ界のさらなる発展に寄与するため、テクノロジーで課題を解決するべく生まれたサービスが、大日本印刷の提供する『スポーツ情報管理サービス』だ。
今回は、サービス開発者である仲谷昌也さんに、サービス開発の背景や戦略、今後のビジョンについて伺った。
自ら肌で感じた競技団体のアナログな現状

そもそも「スポーツ情報管理サービス」とは、スポーツ団体に必要な会員・会費管理、イベント運営、またファン向けの収益施策までを一つのプラットフォームで実現するSaaSサービスだ。大会や競技団体運営をはじめとした膨大な情報を、オンラインで一元管理し、電子チケット機能や写真投稿なども行える、マルチなサービスである。
サービスの発端は、仲谷さん自ら競技団体の課題を直に目の当たりにしたことだった。「スポーツ市場に対してどんなビジネスができるかを考えた時に、たくさんの競技者(する人)を抱える競技団体様を焦点として開発を始めました。実際にニーズシェーピングのため競技団体様の事務所に伺うと、大学生や事務局の方が大会運営のためなどに長い時間作業をしていたり、いまだにファックスを利用している団体もありました。アナログな運用の現状を目の当たりにして、競技団体では「ヒト」「モノ」「カネ」が不足していることによってなかなかDXにトライできない現実をやはり大きく感じました」と振り返る。
現場レベルに足を運び、生の声を聞くことで、スポーツに関わる人々のリアルな課題感をつかんだことで、競技団体の膨大な情報から収益支援までをワンプラットフォームで実現できるサービスを思いついたのだった。
口コミで広がるスポーツDXの輪

スポーツ情報管理サービスはプロモーションを一切行っていない。当初は各競技団体をめぐり、地道にアプローチした。競技団体間や関係者の間で有益さや使いやすさが口コミで広まり、現在導入した団体は、日本ハンドボール協会や日本ホッケー協会、日本陸上競技連盟をはじめとした計25団体にのぼる。「ご利用いただいた競技団体様、競技に携わられている方からのご紹介のみでここまで来ておりますので、ある程度の評価はいただいてるのかなと思っています。また、(競技団体様の)時間とコストはかなり減らせていて、ある競技団体様では、事務局員の方が1人不要になるほどの労働コストは削減できているとお聞きしています」。
また、効率化だけでなく、競技団体にとっての”会員”のとらえ方も大切にしている。「中央競技団体様は、基本的に会員から年度ごとにお金を取っていく形です。会員を継続して育てていくという概念があまりありません。私たちのサービスのコンセプトは、そこを非常に重要視しています」。応援チーム登録や電子チケット、写真投稿機能を設けたのもその一つだ。
競技団体に関わる会員が、人々が、もっと競技や団体を愛せるように。競技団体運営の合理化だけでなく、血の通ったスポーツへの思いを感じるのは、現場の声に耳を傾けた仲谷さんならではのコンセプトだ。
スポーツを”みる・する・ささえる”ためにDNPができること
現状はスポーツを”ささえる”人たちのためのサービスだが、仲谷さんは”みる”、”する”人たちのための機能も増やしていきたいと話す。「スポーツは非常に素晴らしいコンテンツだと思ってます。スポーツビジネスが独り立ちできるような支援をしていきたいですね。加えて、スポーツ情報管理サービスは”ささえる”人たちに向けたサービスですが、これからは”みる”人。OBOGの方や、スポーツが好きな方たちのためのサービスを提供していきたいです」。
最後に、今後のサービスのあるべき姿について伺った。「スポーツって、いろんな人に支えられて成り立っているんだなということと、やはりお金じゃないなっていうところも非常に感じますね。 DX化は手段でしかないと思うので、手段があれば成り立つとは思っていません。何かを変えたいとか、こういうことをしたいというようなビジョンが必要だと思いますので、私たちも決して忘れないように、お客様と共有しながらビジネスを進めていきたいですね」。DXの波がスポーツ界の課題を解決し、より良いスポーツの体験を作り出す。しかしそれは、現状のスポーツに関わる人たちの体温も忘れない。スポーツ情報管理サービスは、競技団体とともにスポーツのより良い未来を作っていく。
人物紹介

大日本印刷株式会社
データ流通事業開発ユニットスポーツ事業推進部 部長
仲谷 昌也(なかたに・まさや)
入社後、流通、通信業界を主に担当。2015年頃より新規事業立ち上げに携わり、複数のテーマで0→1の活動を行う。その中のテーマの1つとしてスポーツ分野での事業構築に従事。2019年「スポーツ情報管理サービス」をローンチ。更なるスポーツビジネスの拡大につなげるべく、スポーツ市場での新テーマを検討中。